小1のフローチャート授業|登校後の朝の準備を比べて育む「統合的な理解」と「総合的な発揮」
振り返りから授業づくりへ|続編
同じ教室、同じ朝の準備。
だから、違いを比べて考えられる。
登校後の行動をiPadのフリーボードで図にし、みんなに伝える1年生の授業。
教室に入り、バッグを置く。荷物を取り出し、必要な物をロッカーにしまう。1年生が毎朝行っている準備を、あらためて順番に説明するとしたら、どのような図になるでしょうか。
前回の「振り返り」が学びを変える——1年生の習慣から育む「統合的な理解」と「総合的な発揮」では、日々の習慣を学びの出発点にすることを考えました。今回は、その考えを「学校に来てからの朝の準備をフローチャートで表す授業」に重ねて説明します。
この授業では、教室に入ってからの行動を思い出し、順序を考え、iPadのフリーボードで図にして、みんなに発表します。余裕のある子は「もし体育があるなら体操着に着替える」といった条件による分岐も加えます。
私が大切にしているのは、端末の操作だけではありません。みんなが知っている行動を共通の材料にして、自分と友達の順序を比べ、理由を話し合えるようにすることです。
なぜ「学校に来てからの朝の準備」なのか
家庭の朝を題材にすると、起きる時間、家族の関わり、支度をする場所などが異なります。ある子には当たり前の行動でも、別の子には思い浮かべにくいことがあります。
一方、教室に入ってからの準備なら、子どもたちは同じ教室やロッカーを使い、共通する学校の約束の中で生活しています。「バッグを置く」「荷物を取り出す」「ロッカーにしまう」と聞けば、互いに具体的な場面を思い浮かべられます。
共通の認識があるからこそ、「私は先にこれを出す」「その前に、これをした方がよいのでは」と、行動の順序や理由に話題を絞れます。友達の図が何を表すか理解しやすく、意見を出し合い、並べ方を試すための足場になります。
| 共有しているもの | 考えられること | 教師の支援 |
|---|---|---|
| 同じ教室・ロッカー | 何を、どこに置くか。 | 実際の場所を指して確認する。 |
| 共通する準備の行動 | 何を先にし、何を後にするか。 | 順序の違いと、その理由を聞く。 |
| 学校の約束や予定 | 体育がある日とない日で、何が変わるか。 | 子どもが知っている条件から分岐を考える。 |
ここでいう公平さは、全員を同じ順番で動かすことではありません。家庭環境の違いに左右されにくい共通の経験を使い、誰もが考えや意見を持ち寄れるようにすることです。
もちろん、経験を言葉にする力や端末操作の得意不得意まで同じになるわけではありません。文字だけでなく、絵や指差し、実物を使う方法も認めます。共通の題材と一人一人に必要な支援を組み合わせて、同じ土俵で話し合える授業を目指します。
まずは、朝の準備を一つ一つの行動に分ける
最初の問いは、「教室に入ってから、どんな準備をしているかな」です。「準備する」の一言で済ませず、バッグを置く、荷物を取り出す、ロッカーにしまうといった具体的な行動を取り出します。
🎒 登校後の朝の準備
「荷物を取り出す前には、バッグを開けている」と気付く子もいるでしょう。「ロッカーにしまう」だけでは伝わりにくいと考え、しまう物の名前を書き加える子もいるかもしれません。どこまで細かくするかは、相手に順序が伝わるかを確かめながら考えます。
フリーボードで、行動と順序を見える形にする
iPadのフリーボードで、行動を図形に入れ、矢印でつなぎます。「何をするか」を表す部分と、「どの順番で進むか」を表す部分を見分けながら、自分の朝の準備をたどれる図にします。
初めから整った図にする必要はありません。行動を書き出して並べ、「この前にすることはないかな」と見直します。順番を入れ替えて指でたどる、説明が足りないところを足す、矢印をつなぎ直す。こうした図づくりの中に、試行錯誤を位置付けます。
入力が難しい子は、手書きや絵を使ったり、教師が用意した行動カードを並べたりしても構いません。操作の援助を受けることと、自分で順序を考えることは両立できます。フリーボードは考えを表して共有する道具であり、操作の速さを競うためのものではありません。
余裕のある子は「もし〜ならば」の分岐へ
基本は、行動を順序立てて表すことです。その上で余裕のある子には、「毎日、全部同じかな?」と問いかけます。例えば、体育がある日に朝の準備の中で体操着に着替える学級の約束があるなら、次のように表せます。
👕 条件によって、行動が変わる
はい ↓
↓
いいえ ↓
↓
見たいのは、ひし形を描けたかではなく、「体育があるかどうかによって、着替える行動が変わる」と分かっているかです。「体育がない日はどこへ進む?」と図をたどってもらえば、条件と行き先の対応を確かめられます。
分岐は全員必須にはしません。順序だけの図でも、行動の関係を考え、理由を説明する学びがあります。分岐を入れた子の方が一律に優れている、という評価にはしないようにします。
みんなに発表し、「自分の当たり前」を比べる
作った図は、みんなに発表します。矢印をたどりながら、「はじめに」「次に」「それから」と順序を伝えます。分岐を加えた子は、「もし体育があるなら」と条件も説明します。
聞く側も、その朝の準備を知っています。だからこそ、「自分と同じところはどこか」「順番が違うのはなぜか」に目を向けられます。みんなが知っている行動だから、聞き手も具体的な意見を持ちやすいのです。
| 比べる視点 | 声かけ | 考えたいこと |
|---|---|---|
| 同じ行動 | 「自分の図にもある準備はどれ?」 | 共有している行動を見つける。 |
| 順序の違い | 「先にすることが違うね。どうして?」 | 順序を選んだ理由を説明する。 |
| 順序の必要性 | 「この二つを逆にしてもできるかな?」 | 先にする必要がある行動と、入れ替えられる行動を考える。 |
| 条件による違い | 「体育がない日は、どこへ進む?」 | 条件と行き先の対応を確かめる。 |
意見を聞いた後は、図を見ながら順番を入れ替えて考えたり、抜けた行動を足したりすることもできます。必ず友達と同じ図に直すのではなく、説明を聞いて自分の表し方を考え直せる余地を残します。
全員の図を一つの正解にそろえるのではなく、共通する行動の中にある順序や条件の違いを検討する。ここに、私が発表と意見の出し合いを取り入れる意味があります。
「統合的な理解」と「総合的な発揮」とのつながり
文部科学省の2026年6月1日の資料では、「統合的な理解」は個別の知識・技能が関連付き、一般化される方向、「総合的な発揮」は課題に応じて思考・判断・表現を選び、組み合わせて働かせる方向として整理されています。[資料1]
この授業では、前者を「いつもの行動を、順序や条件の関係として捉え直すこと」、後者を「自分の朝の準備を相手に分かる図と説明にするために、複数の働きを組み合わせること」につながる学びとして捉えます。以下は公式の授業例ではなく、筆者による対応付けです。
| 視点 | 授業で目指す姿 | 見取りの手掛かり |
|---|---|---|
| 統合的な理解につながる学び | 荷物を出してからしまうなど、行動の前後関係に気付く。発展として、予定により行動が変わることも捉える。 | 「出していないと、しまえないから」「体育がない日は着替えずに進む」と、関係を説明する。 |
| 総合的な発揮につながる学び | 経験を思い出し、必要な行動を選び、順序を考え、図形や矢印で表し、相手に伝わるよう説明する。 | 発表で図をたどり、質問に理由を答えたり、伝わりにくいところを表し直したりする。 |
行動を並べただけで「統合的な理解が完成した」、発表しただけで「総合的な発揮を達成した」とは判断しません。「先にしておく必要があることがある」という関係を複数の行動で捉えられるか、目的に合う情報を選んで説明できるかなど、図と本人の説明を合わせて見ます。
また、「図づくりは理解、発表は発揮」ときっぱり分かれるわけでもありません。説明しようとして行動の関係に気付き、友達の質問から図を捉え直すこともあります。論点整理のポイント資料が示す一体的な育成の視点に照らし、二つを相互に関わるものとして考えます。[資料2]
生活科の評価項目を新設するという意味ではない
2026年10月20日の審議資料では、生活科の資質・能力は、体験と言葉・絵・動作などの表現を通して一体的に育つものとして整理されています。[資料3・本文661頁]現行の生活科解説も、具体的な活動や体験を通すことを土台にしています。[資料4]
上の表は、生活科の正式な評価項目を新設するものではありません。この授業で何が分かり、どのように考えて伝えられるようになるかを教師が整理するための表です。教育課程上の位置付けや評価規準は、学校で扱う教科等の目標に合わせて検討します。
「振り返り」は、普段の行動を見つめ直すところから
振り返りは、授業の最後に感想を書くことだけではありません。普段は意識せずに行っている準備を思い出し、一つ一つの行動に分け、どのようにつながっているかを見つめ直すことも、この授業の大切な振り返りです。
友達の図と比べることで、自分だけでは気付かなかった順序や表現に目が向きます。「私はここを先にしていた」「この説明を足した方が伝わる」と、自分の行動や考え方を外から見直す機会になります。
長い振り返り文を全員に求める必要はありません。「自分と同じだったところ」「違っていて考えたところ」を図で指すことや、短く話すことでも考えを確かめられます。文章量や操作の速さだけで学びを判断しないようにします。
教師が見たいのは、図の華やかさより「つながりの説明」
| 確かめたいこと | 問い・支援 |
|---|---|
| 行動が具体的か | 「何を、どこにしまう?」と聞く。言葉が出にくければ実物や場所を指してもらう。 |
| 順序の理由を捉えているか | 「どうして、こちらが先?」と聞く。行動カードを動かして比べる。 |
| 分岐の両方を説明できるか | 分岐を入れた子には、体育がある日とない日の両方をたどってもらう。 |
| 相手に伝わるよう表しているか | 図を指しながら発表する。聞き手が迷った場所を一緒に確認する。 |
順序だけを表した子にも、理由を考えた学びがあります。分岐を多くした子にも、その意味がまだ曖昧な場合があります。図形の数や見た目だけで比べず、その子が何を考え、どう説明しているかを聞き取ります。
共通の経験から、それぞれの考えを持ち寄る
同じ行動を知っているから、違いに気付ける。同じ場所を思い浮かべられるから、理由を尋ねられる。その共通の土台が、試行錯誤と意見の出し合いを支えます。
私は、家庭での経験の違いに左右されにくい題材を選び、どの子も自分の考えを持って参加できる授業にしたいと考えています。フリーボードは、その考えを見える形にし、動かし、伝えるための道具です。
「いつもやっている」ことを「順序や条件を考えて説明できる」ことへ。そして、自分の説明を友達の考えと照らし合わせることへ。日常の習慣から理解と表現を深める、この積み重ねを大切にしたいと思います。
関連記事・参考資料
関連する授業案:iPadフリーボードのフローチャート授業|小1・小2の5時間指導案。リンク先は生活で試す活動なども含む別の展開案です。本記事で説明した授業の必須活動と同一ではありません。
- 文部科学省(2026年6月1日)各教科等の「統合的な理解」「総合的な発揮」の例。1頁。用語の意味と教科ごとの示し方。
- 文部科学省論点整理ポイント資料・詳細版。本文6〜7頁。資質・能力の深まりと一体的育成。
- 文部科学省(2026年10月20日)次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(3/4)。本文661頁(PDF39枚目)。告示済みの新学習指導要領ではなく、審議資料として参照。
- 文部科学省(2017)小学校学習指導要領解説 生活編。第2章、本文9〜10頁。現行の教科目標。
図・対話例・授業への対応表は筆者による説明です。文部科学省が本授業を認定・推奨したことを示すものではありません。








