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【教員の新しい働き方】非常勤×フリーランスという選択肢|メリット・デメリット・事例紹介

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教員における「非常勤×フリーランス」という働き方が、近年注目を集めている多様なキャリアパスの一つです。これは、公立または私立学校の非常勤講師として勤務しつつ、個人事業主(フリーランス)としても活動する形態を指します。

「非常勤講師って、給料が安定しないんじゃないの?」 「フリーランスって、本当に稼げるの?」

この記事では、この新しい働き方の実態を、元教員である前田ひろあき氏の具体的な事例や全国の教員への調査結果を交えながら、経済状況、生活様式、メリット、デメリットまで、そのリアルに迫ります。

非常勤×フリーランスの概要と法的背景

公立学校の非常勤教員は、特別職地方公務員にあたるため、地方公務員法および教育公務員特例法の営利企業への従事制限が原則として適用されません。このため、許可なく副業が可能とされていますが、一部の自治体では対応が異なる場合があるため、確認が推奨されます。私立学校の非常勤教員の場合は、勤務先の学校が定める就業規則によって副業の可否が異なります。

元公立中学校教員である前田ひろあき氏は、この働き方を「教員・公務員をアップデートする」と表現し、自身の経験や全国の教員への取材を通して、教員の兼業・副業に関する情報発信や推進に取り組んでいます。

「非常勤×フリーランス」の経済状況と生活のリアル

この働き方での収入は、非常勤講師としての給与とフリーランスとしての収益の組み合わせによって、変動が激しくなります。

1. 具体的な収入例

前田ひろあき氏の事例では、開業1年6カ月時点の月収合計は約16万円で、その内訳は以下の通りです。

収入源月収目安
非常勤講師としての給与(週10時間勤務)8万~12万円(時給2,880円)
オンライン指導(スコラボなど)1万~2万円程度
教育関連事業体での業務委託数万円
Web制作など数万円(不定期)
YouTubeやサイト運営の広告収益約3,000円
合計約16万円

この事例では、家計全体としては毎月赤字ですが、年間で見ると資産は微増している状態に組み立てられています。メインの収入は妻(小学校教員)の給料とボーナスであり、個人事業の売り上げは経費で相殺されることが多いと述べています。

2. 非常勤講師と副業の収入状況

非常勤講師が副業で得ている収入に関するアンケート結果もあります。

副業で得ている月収割合
~1万円13.6%
2~3万円18.2%
4~5万円9.1%
6~10万円31.8%(最も多い)
10万円以上18.2%

この結果から、副業だけで月に10万円以上稼いでいる非常勤講師も18%いることが分かります。

また、本業と副業を合わせた1ヶ月の給与総額は、63.6%が20万円以下、22.7%が21~30万円となっています。

3. フリーランスとしての副業収入の現実

フリーランスとしての活動は、収益化までに時間と努力が必要であり、その収入は不安定です。

  • Webライターの事例:
    • 元高校英語教師の「こう」さんは、Webライターとみられる副業で、初月3,800円、2ヶ月目12,000円、3ヶ月目26,000円、4ヶ月目58,000円と順調に収入を伸ばしています。
    • 別の元小学校教員「あや」さんは、未経験からWebライターを始め、ライター歴1年でブログ運営と合わせて月10万円ほどの収入を得ています。ただし、多い時で月16万円、少ない時で4万円と変動がある実体験も報告されています。

生活様式と時間管理:自由な働き方の裏側

非常勤×フリーランスの働き方は、比較的柔軟なスケジュールを組むことができます。前田氏の例では、週10時間は小学校教員として勤務し、他の時間は自身の事業、業務委託の仕事、コミュニティ活動に充てています。

  • 非常勤講師が副業に費やす時間:
    • 1週間に10時間以下: 59.1%
    • 11~20時間: 31.8%
  • 柔軟な働き方:
    • 前田氏のスケジュール例にあるように、特定の曜日はフリーで業務に充てるなど、非常勤講師は常勤教員よりも拘束時間が短く、空き時間を副業に有効活用しやすい点が魅力的です。

メンタルとモチベーション:「副業」から「複業」へ

教員が副業に関心を持つ理由は、単に「お金のため」だけではありません。多くの教員が、教室の外に広がる世界を体感し、自身の価値を社会に還元したい、学校の外で得た学びを子どもたちに還したいという願いを抱いています。

前田氏はこれを、単なる収入源としての「副業」ではなく、自分の中に複数の側面を持つ「複業」という概念で提唱しています。教員が教室の外の世界を体験し、そこで得た学びや経験を子どもたちに還元することが、社会との接点を持つ先生の言葉に説得力を与え、子どもたちのロールモデルとなる効果が期待できます。

この働き方のメリットと課題

メリット

  • 時間の柔軟性: 非常勤講師は常勤教員よりも拘束時間が短く、空き時間を副業に有効活用しやすいです。
  • スキルの活用と向上: 教えるスキルを活かして家庭教師として働けるだけでなく、ブログ運営では文章力、SEO、データ分析などのビジネススキルが身につきます。
  • キャリアの多様化と自己実現: 副業経験は、将来の転職活動においてアピールポイントとなり、新たなキャリアの可能性を広げます。
  • 収入の安定化: 非常勤講師は長期休暇期間に収入が減少するため、副業で別の収入源を確保することで、生活の安定感を高めることが可能です。
  • 低コスト・低リスク: ブログ運営などの副業は、初期費用や維持費が少なく、比較的リスクが低いと言えます。

課題と注意点

  • 収入の不安定性: 収入が月ごとに大きく変動する可能性があり、安定した生活設計には注意が必要です。
  • 本業への影響と心身の健康: 過度な副業は精神的・肉体的ストレスを増大させ、健康に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
  • 確定申告の手間: 副業による所得が年間20万円を超えた場合、確定申告が義務付けられます。
  • 「空気」の壁: 公立常勤教員の場合、法律上は許可を得れば副業が可能であるにもかかわらず、「制度の壁と文化・慣習の壁」が存在すると指摘されています。
  • 労働時間通算ルール: 地域部活動など、地域団体に雇用される形で兼業する場合、学校での労働時間と地域団体での労働時間が通算され、労働基準法に規定される法定労働時間を超える部分は時間外労働となります。各教育委員会は、教員の心身の健康を確保するため、合計時間が単月100時間未満、複数月平均80時間以内とならないことを確認・判断することが望ましいとされています。

まとめ:非常勤×フリーランスは、教員の可能性を広げる新しい働き方

「非常勤×フリーランス」は、単なる収入源にとどまらず、教員としての視野を広げ、専門性を高める機会にもなり得ます。この働き方は、教員が社会を知り、目の前の子どもたちがどのような世界に出ていくのかを理解する上で、社会に前向きな影響を与えると信じられています。

この新しい働き方は、教員不足が深刻化し、教職離れが進む現状において、教員のキャリアを豊かにし、ひいては教育全体の未来を拓く鍵となるでしょう。

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かおる先生
かおる先生
小学校教諭
大学・大学院では教育や技術について学び、小学校教諭免許に加えて、中学校(技術)および高等学校(情報・工業)の専修免許も取得しました。 「知ることの入り口」に立つ児童たちに、わかりやすく伝えることに大きなやりがいを感じ、現在は小学校の教員として日々子どもたちと向き合っています。またこの場では、日々の教育現場で役立っている業務効率化や時短の工夫、ちょっとした小技に加えて、趣味でもあるガジェットについての話題も交えながら、さまざまな情報をまとめていきたいと考えています。
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